空き家の相続放棄|放棄しても管理責任が残る場合

公開 2026-10-09約5分比較表つき

机に書類を置き、静かに手を離すヤモリのキャラクター
目次を開く(6項目)
  1. 相続放棄でできることと、期限
  2. 放棄しても管理責任が残る人、残らない人
  3. 引き渡し先|次順位の相続人か、相続財産の清算人
  4. 放棄の前にやってはいけないこと
  5. 放棄後に空き家が傷んだとき、近隣と税金はどうなるか
  6. 放棄ではなく、手放す方法もある

相続放棄をすると、その人は初めから相続人でなかったものとして扱われます(民法939条)。ただし、放棄の時に実家を現に占有していた人には、次の管理者に引き渡すまで、家を保存する義務が残ります。令和5年4月1日に施行された民法940条の改正で、この義務は「放棄の時に現に占有している」場合に限られると定められました。

実家に住んでいたか、鍵を持っているか、自分の荷物を置いているか。この3つを先に確かめてください。放棄の判断が変わることがあります。

相続放棄でできることと、期限

相続放棄をすると、実家だけでなく、預貯金や借金も含めて、すべて相続しなくなります。実家だけを選んで放棄することはできません。

申述は、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所に行います。期限は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内です(民法915条1項)。費用は、収入印紙800円と、連絡用の郵便切手です。

3か月以内に財産を調べきれないときは、期間を延ばす申立てができます。申立人は相続人などの利害関係人で、家庭裁判所が認めた場合に期間が延びます。申立ても3か月以内にします。

放棄しても管理責任が残る人、残らない人

民法940条1項は、放棄した人の保存義務を定めています。放棄の時に相続財産を現に占有しているときは、相続人か相続財産の清算人に引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で保存しなければなりません。

放棄の時に占有していなければ、この条文の義務は生じません。

あなたの状況 管理責任 次にすること
実家に同居していた。または今も鍵を持ち、荷物を置いている 940条の保存義務が残る可能性が高い 引き渡す相手(次順位の相続人、清算人)を決め、それまで家を保存する
実家から遠く離れて暮らし、鍵も荷物もない 940条の義務は、原則として生じない 放棄の申述を進める。ほかの相続人には、放棄したことを伝える
亡くなった人の住んでいた家を、家族の誰かが管理している 管理している人が占有者と判断される可能性がある 誰が占有しているかを、家族で整理する
放棄の前に、家の売却や解体を進めてしまった 放棄できなくなるおそれがある 放棄を考えるなら、処分をやめて、家庭裁判所か専門家に相談する

占有しているかどうかは、事案ごとに判断されます。国土交通省の資料では、自分の物を置いている、鍵を持っているといった事情が、目安として挙げられています。判断に迷うときは、家庭裁判所か弁護士に確認してください。

条文が求めているのは、自分の財産と同じ程度の注意で、財産を保存することです。具体的に何をどこまでするかは、事案で判断されます。

戸締まりをする、郵便物や敷地の状態を見に行く、といった見守りが目安になります。

この義務は、引き渡すまで続きます。引き渡す相手がいなければ、いつまでも続くおそれがあります。

引き渡し先|次順位の相続人か、相続財産の清算人

保存義務を終わらせるには、相続人か相続財産の清算人に引き渡します。

相続放棄が出ると、相続権は次の順位の人に移ります。たとえば子が全員放棄すれば、親や兄弟姉妹に移ることがあります。引き渡す先が見つかれば、保存義務は終わります。

相続人が全員放棄をしたときなど、引き渡す相続人がいない場合は、家庭裁判所に相続財産の清算人の選任を申し立てます。利害関係人または検察官が請求でき、家庭裁判所は清算人を選任しなければならないと定められています(民法952条1項)。相続財産を保存するために必要な処分を、家庭裁判所に求めることもできます(民法897条の2)。

清算人の選任にかかる費用は、事案で変わります。手続きの前に、家庭裁判所に確認してください。

放棄の前にやってはいけないこと

相続人が相続財産の全部または一部を処分すると、単純承認をしたものとみなされます(民法921条1号)。保存行為は除かれます。単純承認をすると、放棄はできません。

行為 放棄への影響
実家を売る、解体する、長期の賃貸をする 処分にあたり、単純承認とみなされるおそれがある(保存行為や短期の賃貸は除かれる)
家財道具を売る、捨てる 処分にあたるかが問題になる
戸締まりをする、雨漏りの応急措置をする 保存行為は処分から除かれる
3か月の期間を何もせずに過ごす 期間内に放棄をしないと、単純承認とみなされる(民法921条2号)

どこまでが保存で、どこからが処分かは、事案で判断が分かれます。放棄を考えているなら、家に手を入れる前に、家庭裁判所か専門家に相談してください。

放棄後に空き家が傷んだとき、近隣と税金はどうなるか

国土交通省が令和5年3月31日に出した資料は、放棄の時に家を占有していた人が、空家等対策特別措置法でいう管理者にあたる可能性があるとしています。占有者がいなければ、自治体が、簡易な代執行や、民法の清算人の制度を検討するとされています。

令和5年12月13日には空家法が改正され、管理不全空家が加わりました。管理が不十分な状態で自治体の指導に従わず、勧告を受けると、住宅用地の固定資産税の特例が外れます。静岡市の案内では、土地の固定資産税と都市計画税が、規模などによって異なるものの、約4倍になるとされています。

放棄したあとの空き家の負担は、占有の有無と、引き渡し先の有無で変わります。放置したときの全体は空き家を放置するとどうなる?で確認できます。

放棄ではなく、手放す方法もある

実家が売れない、借金はないといった場合、放棄をすると、ほかの財産も手放すことになります。実家の土地だけを手放す方法に、相続土地国庫帰属制度があります。使える土地には条件があります。詳しくは相続土地国庫帰属制度とはで確認できます。

売れない土地の選択肢の比較は、田舎の実家を処分したいにまとめています。

放棄をするか、承認して手放すかの最終判断は、弁護士・司法書士などの専門家と、家庭裁判所の窓口で確認してください。

参考にした資料

最終確認日:2026年10月9日。制度や公表内容は変わる場合があります。