相続土地国庫帰属制度とは|使える条件と費用

公開 2026-10-09約5分計算例つき比較表つきチェックリストつき

広い空き地から、遠くの役所へ続く道を指さすヤモリのキャラクター
目次を開く(6項目)
  1. 制度のあらまし
  2. 申請できる人
  3. 申請できない土地の要件チェック表
  4. 費用|審査手数料と負担金
  5. 申請から帰属までの流れ
  6. 使う前に、ほかの手放し方と比べる

相続土地国庫帰属制度は、相続や相続人への遺贈で取得した土地を、国に引き渡せる制度です。誰の土地でも使えるわけではありません。建物が残る土地や、境界がはっきりしない土地などは使えません。使える土地でも、審査手数料が土地1筆につき14,000円かかります。承認されたあとには、負担金が基本で20万円かかります。

土地に建物があるか、境界に争いがないかを先に確かめてください。この2つが、使えるかどうかを大きく分けます。

制度のあらまし

制度は、令和5年4月27日に始まりました。所有者が分からない土地を、将来増やさないための制度です。相続した土地を持て余している人が、一定の要件を満たしたうえで、負担金を払って国に引き渡します。

申請先は、土地のある都道府県の法務局・地方法務局の本局で、不動産登記部門が受け付けます。支局や出張所では受け付けていません。窓口に持っていくか、書留郵便かレターパックプラスで送ります。インターネットやメールでは申請できません。

申請できる人

申請できるのは、相続や、相続人への遺贈で土地を取得した人です。制度が始まる前に相続した土地も対象です。

共有地は、共有者全員が共同で申請します。1人でも同意しないと申請できません。共有者の中に売買で持分を取得した人がいても、相続で持分を取得した共有者がいれば申請できます。

法人は、基本的に利用できません。売買で取得した土地は、相続で取得したことを確認できないため、申請できません。

申請できない土地の要件チェック表

次の表の、上の5つに当てはまると、申請そのものが却下されます。下の5つに当てはまると、審査で承認されません。いずれも、審査手数料は戻りません。

要件 当てはまる土地の例 結果
建物がある 空き家が建っている(登記がなくても該当) 却下
担保権や使用収益権がある 抵当権の登記が残っている。賃借権や地上権がある 却下
他人の利用が予定されている 現に道路として使われている。墓地内、境内地、水道用地、ため池 却下
土壌汚染がある 基準を超える特定有害物質がある 却下
境界や所有権に争いがある 隣地と境界を争っている。他人が所有権を主張している 却下
勾配30度以上で高さ5メートル以上の崖があり、管理に過分な費用がかかる 擁壁の工事が必要な崖地 不承認
地上に管理を妨げる物がある 倒木のおそれがある木、廃屋、放置された車 不承認
地下に除去が必要な物がある 産業廃棄物、古い基礎、浄化槽、井戸、大きな石 不承認
隣の土地の所有者らと争わないと管理できない 通行が妨げられている土地、不法に占拠されている土地 不承認
そのほか管理に過分な費用や労力がかかる 災害の危険がある土地、動物の被害がある土地、整備が必要な森林 不承認

境界が明らかとは、申請者が認識する隣接地との境界が表示され、隣地の所有者の認識と一致していることです。測量や境界確認書の提出までは求められていません。

建物があるときは、原則として、建物を取り壊してから申請します。墓地として許可を受けた土地は却下され、墓石があると不承認になる可能性が高いとされています。墓地の部分を分筆して、残りの部分だけを申請する方法も、法務省のQ&Aで示されています。

費用|審査手数料と負担金

費用 金額 払うとき
審査手数料 土地1筆につき14,000円(収入印紙) 申請するとき。取下げ、却下、不承認でも戻らない
負担金 基本は20万円。市街化区域などの宅地・農地や森林は、面積に応じて高くなる場合がある 承認されたあと。通知を受けた翌日から30日以内

負担金は、国有地の種目ごとに、10年分の標準的な管理費用を考えて決められています。払うのは一度きりです。30日以内に払わないと、承認は効力を失います。

面積に応じて算定される区分の人は、法務省が公開している負担金の自動計算シートで金額を調べられます。

費用の計算例

次の仮定で、国に引き渡すまでの最低限の現金を計算します。

  • 土地は1筆で、負担金は基本額の20万円で足りる
  • 建物はなく、取り壊しの費用はかからない

審査手数料14,000円と負担金200,000円で、合計214,000円です。実際は、面積によって負担金が上がる場合があります。建物を取り壊す費用や、戸籍・登記事項証明書などの書類を集める費用は、別にかかります。

申請から帰属までの流れ

  1. 法務局に事前に相談する。予約制で、土地のある都道府県の本局で受け付ける
  2. 申請書を提出し、審査手数料を納める
  3. 法務局が書面と現地を調べる。隣地の所有者への境界の確認も行う
  4. 承認されたら、負担金の通知と納入告知書が届く
  5. 30日以内に負担金を納める
  6. 納めた時点で、土地の所有権が国に移る

審査にかかる標準的な期間は、8か月とされています。超える場合もあります。

却下や不承認の処分を知った日の翌日から3か月以内は、法務省の民事局に審査請求できます。審査の途中で申請者が亡くなったときは、土地を相続した人が、相続の日から60日以内に申し出れば手続きを続けられます。

使う前に、ほかの手放し方と比べる

国に引き渡すには、手数料と負担金のほかに、建物を取り壊す費用や審査に待つ時間がかかります。要件を満たさない土地は、時間と手数料を使っても承認されないことがあります。

売れる土地や貸せる土地は、国庫帰属を申請する前に、売却や空き家バンクを先に試せます。売れない田舎の土地は、国庫帰属、自治体への寄附、買い手探し、解体してからの売却などを並べて比べます。比較の表は田舎の実家を処分したいにまとめています。

制度が使えるか、書類をどう整えるかは、土地のある場所の法務局の相談窓口で確認できます。境界の争いや共有者の同意など、法律の判断が絡むときは、弁護士・司法書士・行政書士などの専門家にも確認してください。

参考にした資料

最終確認日:2026年10月9日。制度や公表内容は変わる場合があります。