共有名義の実家は一人で売れる?売却に必要な同意

公開 2026-10-09約5分比較表つき

家の模型を囲む複数の手のシルエットを、頬杖をついて見守るヤモリのキャラクター
目次を開く(6項目)
  1. 共有物の行為は4つに分かれる
  2. 家と土地を売るには全員の同意が要る
  3. 令和5年4月施行の見直しで変わったこと
  4. 共有者の状況別に、取れる道を整理する
  5. 全員で売るまでの進め方
  6. 共有者が連絡不能のときは、専門家に相談する

共有名義の実家は、一人の判断では全体を売れません。買主に家と土地のすべてを渡す売買なので、共有者全員が売主として契約に加わる形で進めます。自分の持分だけなら、他の共有者の同意なしに売れます。ただ、共有者の一人になる買主は限られます。

反対する人や連絡のつかない人がいる場合は、令和5年4月1日に施行された共有制度の見直しで、裁判所を通じて進める道が増えました。

次に取る行動は2つです。登記簿で共有者全員を確認することと、全員が売る気があるのかを書面に残して聞くことです。

共有物の行為は4つに分かれる

民法は、共有物に対する行為を保存・管理・軽微な変更・変更に分け、必要な同意を変えています。

区分 必要な同意 例 根拠
保存行為 各共有者が単独でできる 傷んだ箇所の応急の修繕 民法252条5項
管理行為 持分の価格の過半数 管理者の選任、短期の賃貸 民法252条1項、4項
軽微な変更 持分の価格の過半数 形状や効用を著しく変えない変更 民法251条1項、252条1項
変更 共有者全員 形状や効用を著しく変える工事 民法251条1項

「持分の価格の過半数」は、人数ではなく持分の大きさで数えます。たとえば3人が各3分の1なら、2人が賛成すれば過半数です。持分が6割の人がいれば、その一人で過半数になります。

短期の賃貸にも期間の上限があります。山林は10年、土地は5年、建物は3年までです。

表の例は説明のための一例です。どの区分に当たるかは、工事や契約の中身で変わります。

家と土地を売るには全員の同意が要る

実家の売却は、表のどの区分にも収まりません。共有物全体の売却が「変更」に含まれるかは、条文だけでは決まらないとされています。そのため、共有者全員が売主になる形で進めるのが基本です。

実際には、買主は家と土地の完全な所有権を求めます。そのため、共有者全員が売買契約の売主になる形で進めるのが基本です。一人でも契約に加わらなければ、全体は売れません。

所有者は法令の制限内で自由に所有物を処分できると民法206条が定めています。この考え方から、自分の持分だけを売ることは、他の共有者の同意がなくてもできます。ただし買主は、他の共有者と共有の関係に入ります。買い手を見つけにくい点は、あらかじめ見込んでおいてください。

令和5年4月施行の見直しで変わったこと

共有制度の見直しは、令和5年4月1日に施行されました。売却に関わる点を挙げます。

  • 形状や効用を著しく変えない軽微な変更は、持分の過半数で決められる(民法251条1項、252条1項)
  • 共有者の所在が分からないときは、裁判所の裁判で、その人を除いた同意で変更ができる(民法251条2項)
  • 賛否を催告しても期限内に答えない共有者がいるときは、裁判所の裁判で、その人以外の過半数で管理事項を決められる(民法252条2項)
  • 所在が分からない共有者の持分を、他の共有者が取得できる(民法262条の2)
  • 所在が分からない共有者の持分を、他の共有者全員の譲渡を条件に、第三者へ譲渡する権限を与えてもらえる(民法262条の3)

最後の民法262条の3が、全体の売却に関わる制度です。法務省の資料では、この権限をもとに不動産全体を第三者へ譲渡でき、所在不明の共有者には、時価相当額が分けられると説明されています。譲渡は、裁判の効力が生じてから2か月以内に行う必要があります。裁判所は期間を延ばすこともできます。

どちらの制度も、共有者が相続人のときは条件があります。不明な共有者の持分が相続財産で、遺産分割をすべき場合は、相続開始から10年を経過していないと裁判ができません。

これらの制度は、所在が分からない共有者に使うものです。反対している共有者がいるだけでは使えません。

共有者の状況別に、取れる道を整理する

共有者の状況 全体を売るために取れる道 注意点
全員が売ることに賛成 全員が売主になって契約する 持分に応じた代金の分け方を、先に書面で決める
一人が売ることに反対 話し合いを続ける。決裂したら共有物の分割を求める 分割は、まず現物分割などが検討され、難しいときに競売が命じられる場合もある(民法258条)
所在が分からない人がいる 裁判所の裁判を使い、持分の取得または譲渡権限の付与を受ける 不明者の調査を尽くしたことが前提。相続の場合は10年の条件がある
返事をしない人がいる 期限を決めて賛否を催告する。それでも答えないときは、管理事項について裁判を求める 売却そのものは管理事項ではない
自分は手放したいだけ 自分の持分だけを売る 買主は他の共有者と共有になる

共有物の分割は、民法256条により、どの共有者もいつでも請求できます。分割しない旨を契約で定める場合も、期間は5年までです。分割で話がまとまらないときは、民法258条により、裁判所は現物の分割か、他の共有者の持分を取得させる方法を命じます。これらが難しいとき、または価格が著しく下がるおそれがあるときに、競売を命じます。

全員で売るまでの進め方

合意をつくる手順です。上から順に進めます。

  1. 登記簿で、共有者と持分を確認する。名義が亡くなった人のままなら、先に相続登記が要る
  2. 全員に、売りたいか持ちたいかを聞く。連絡先が分からない人は、戸籍や住民票で探す
  3. 査定を取って、売れる金額の目安を共有する
  4. 代金の分け方と、売却にかかる費用の負担を、書面にまとめる
  5. 全員が署名する形で、売却の依頼先を決める
  6. 全員が売主として、売買契約と引き渡しに参加する

相続した実家の名義変更は相続登記の義務化と売却前の名義変更で、売却全体の手順は相続した実家の売却手順で確認できます。

共有者が連絡不能のときは、専門家に相談する

所在不明の共有者の持分を取得する制度や、譲渡の権限を得る制度は、裁判所への申立てが必要です。調査の尽くし方や提出書類は事案で変わります。

法務局、弁護士、司法書士の相談窓口で、自分の場合にどの制度が使えるかを確認してください。売却の可否や税金の最終判断は、弁護士・司法書士・税理士と公的窓口で確認してください。

参考にした資料

最終確認日:2026年10月9日。制度や公表内容は変わる場合があります。