空き家を放置するとどうなる?特定空家と税金の負担

空き家を放置すると、市区町村から指導や勧告を受けます。固定資産税が上がり、命令に従わなければ過料や強制撤去の費用を負担することにもなります。倒壊しそうになってからではなく、その手前の「管理不全空家等」の段階でも勧告の対象になります。
勧告を受けると、敷地は固定資産税の住宅用地特例の対象から外れます。この記事の計算例では、土地の税額が年間約6.0万円から約30.6万円になりました。次に取る行動は、家の状態を確認して、売るか壊すか管理を続けるかを決めることです。
空き家を放置すると何が起きるか
起きることを、リスクごとに整理します。
| リスク | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 税の負担が増える | 勧告を受けると、住宅用地特例が外れる。計算上、土地の固定資産税は6倍、都市計画税は3倍になる(小規模住宅用地の場合) | 勧告を受ける前に、管理を改善するか、売却や解体を決める |
| 行政から指導や勧告を受ける | 管理不全空家等や特定空家等と判断されると、市区町村が助言、指導、勧告を行う | 屋根や外壁、庭木、ごみの状態を定期的に確認する |
| 命令に従わず過料を科される | 命令に違反すると、50万円以下の過料の対象になる | 指導や勧告の段階で、期限までに改善する |
| 強制撤去の費用を請求される | 行政代執行で建物が撤去されると、費用は所有者から徴収される | 命令を受ける前に、自分で解体や売却を進める |
| 近隣に損害を与える | 屋根や外壁の落下で損害が出ると、所有者が損害賠償責任を問われる可能性がある | 傷みのある部分を直すか、解体する |
| 衛生や治安の問題が起きる | ねずみや害虫の発生、悪臭、不法侵入、枝の越境などが起きうる | 施錠、窓の補修、草木とごみの手入れ |
| 名義が亡くなった人のまま残る | 相続登記は2024年4月1日から義務で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になりえる | 名義を確認し、相続登記を進める |
放置の期間が長いほど、状態は悪くなります。傷んだ建物は、売るときにも解体するときにも選択肢が狭まります。
特定空家等と管理不全空家等の違い
国土交通省の資料では、2つの区分があります。
- 特定空家等:防災、衛生、景観などで周辺の生活環境に深刻な影響を及ぼしている空き家
- 管理不全空家等:放置すれば特定空家等になるおそれがある空き家。2023年12月13日施行の改正で加わった
特定空家等の判断の目安は、次の4つの状態です。ガイドラインに挙がっている具体例を添えます。
| 状態 | 具体例 |
|---|---|
| そのまま放置すれば、倒壊など著しく保安上危険となるおそれがある | 建物の著しい傾き。基礎や土台、柱や梁の腐朽や破損。屋根ふき材や外壁、看板、門や塀の落下や倒壊のおそれ |
| そのまま放置すれば、著しく衛生上有害となるおそれがある | 吹付け石綿の飛散のおそれ。浄化槽の破損による汚物の流出と臭気。ごみの放置による臭気、ねずみや害虫の発生 |
| 適切な管理が行われず、著しく景観を損なっている | 多数の窓ガラスが割れたまま。外壁の汚れや落書き。立木が建物の全面を覆うほど茂っている。ごみが散乱している |
| その他、周辺の生活環境の保全のために放置することが不適切である | 立木の枝が道路にはみ出し、歩行者の通行を妨げている。動物が住みつき、ふん尿の臭気や害虫が出ている。門や窓が破損し、だれでも入れる状態 |
具体例は、判断の参考として示されたものです。実際に特定空家等かどうかは、市区町村が個別に判断します。
行政の対応はどう進むか
市区町村の対応は、段階を踏んで進みます。
| 段階 | 内容 | 所有者に起きること |
|---|---|---|
| 助言・指導 | 管理を改善するよう求められる | 期限までに直せば、次の段階に進まない |
| 勧告 | 指導しても改善されない場合に出る | 敷地が住宅用地特例の対象から外れ、固定資産税等が上がる |
| 命令 | 勧告に従わない場合に出る | 違反すると50万円以下の過料の対象になる |
| 行政代執行 | 命令に従わない場合に、市区町村が撤去などを行う | かかった費用が所有者から徴収される |
緊急に除却が必要な特定空家等は、命令などの手続きを経ずに行政代執行ができるようになりました。台風などで危険が迫る場合が想定されています。
行政代執行の費用は、市区町村長が納付命令で請求します。納付されない場合は、国税滞納処分の例によって強制徴収できます。国土交通省の資料では、2015年5月から2023年3月までの累計で、勧告が3,078件ありました。命令は382件で、行政代執行は180件です。これは2023年3月までの数字です。最新の件数は、国土交通省の公表資料で確認してください。
勧告を受けると固定資産税はいくら上がるか
住宅用地の特例は、小規模住宅用地(200㎡以下の部分)で課税標準が価格の6分の1、一般住宅用地(200㎡を超える部分)で3分の1に下がる仕組みです。都市計画税は、それぞれ3分の1と3分の2です。
次の仮定で、勧告の前後を比べます。
- 土地の固定資産税評価額:1,800万円
- 土地の面積:150㎡(小規模住宅用地の範囲)
- 固定資産税の税率:標準税率の1.4%
- 都市計画税の税率:制限税率の0.3%(市街化区域内の土地とする)
- 負担調整措置と、市町村ごとの税率の違いは考えない
| 勧告の前(特例あり) | 勧告の後(特例なし) | |
|---|---|---|
| 固定資産税 | 1,800万円×1/6×1.4%=約4.2万円 | 1,800万円×1.4%=約25.2万円 |
| 都市計画税 | 1,800万円×1/3×0.3%=約1.8万円 | 1,800万円×0.3%=約5.4万円 |
| 土地の年間合計 | 約6.0万円 | 約30.6万円 |
この仮定では、年間の負担が約24.6万円増えます。実際の税額は、納税通知書の課税明細で確認してください。
勧告を受けなくても、特例が外れる場合があります。国土交通省の資料は、特例の対象になる「住宅」に当たらない場合として、次の3つを示しています。
- 構造上、住宅と認められない状態にある
- 使用の見込みがなく、取り壊しを予定している
- 居住に使うための管理を怠っていて、今後人が住む見込みがないと認められる
放置を終わらせるには何から始めるか
状況ごとの出発点は、次の表のとおりです。
| いまの状況 | 先にすること | 読む記事 |
|---|---|---|
| 売ってよい。早く手放したい | 査定を取り、売却の方法ごとの手取りを比べる | 空き家の売却方法4つ |
| 傷みが大きく、人に売るのが難しい | 解体の見積もりと、補助金の窓口を調べる | 空き家解体の補助金 |
| 当面は持ち続ける | 屋根、外壁、庭木、ごみ、施錠の状態を定期的に見る | 国土交通省の空き家対策特設サイトにある管理チェックリスト |
| 名義が亡くなった親のまま | 相続人で方針を話し、相続登記を進める | 相続した実家を売るまで |
| 相続放棄を考えている | 放棄後の管理の責任を調べる | 空き家の相続放棄 |
売るか壊すか迷うときは、処分方法ごとの費用と手間の比較表が 空き家の処分方法を比較 にあります。
持ち続ける場合でも、傷みが進めば管理不全空家等になりえます。管理を自分で続けられないときは、市区町村の空き家相談窓口に問い合わせてください。
参考にした資料
- 国土交通省 空き家対策特設サイト「空家法とは」
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」(所有者向けのお役立ちツール、管理チェックリスト)
- 国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」(特定空家等・管理不全空家等の定義、勧告との関係、措置実績)
- 国土交通省「空家法と2023改正空家法」(2023年12月13日施行、過料)
- 国土交通省「『特定空家等に対する措置』に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」(状態の具体例、代執行の費用徴収、過料)
- 国土交通省「土地の保有に係る税制」(固定資産税・都市計画税の税率、住宅用地の特例)
- 政府広報オンライン「空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化。トラブルになる前に対応を!」(所有者の責任、緊急時の代執行)
- 法務省「相続登記義務化」周知フライヤー(2024年4月1日開始)
不安があるときは、空き家の所在地の市区町村にある空き家対策の担当課に相談できます。
最終確認日:2026年10月9日。制度や公表内容は変わる場合があります。税や法律の判断は、市区町村の窓口と専門家に確認してください。