相続した不動産を売ると税金はいくら?譲渡所得税の計算例

相続した不動産を売ったときの税金は、「売った金額-取得費-売るためにかかった費用」に税率をかけて決まります。所有期間が5年を超える場合の税率は、復興特別所得税を含めて約20.315%です。
次の仮定で計算すると、特例なしの税額は約422.6万円でした。取得費加算を使えば約388.0万円に下がり、3,000万円控除が使えれば0円になります。あなたの家に当てはめるには、売却額の目安と取得費と売却費用の3つを集めます。
譲渡所得の税額は、この式と税率で決まる
国税庁が示す計算式は、次のとおりです。
課税譲渡所得金額 = 譲渡価額(売った金額)-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
取得費は、買ったときの代金や手数料と、その後の改良費です。建物は、年数に応じた減価償却費相当額を差し引きます。譲渡費用は、仲介手数料や印紙代など、売るために直接かかった費用です。
税率は、売った年の1月1日現在の所有期間で決まります。
| 区分 | 所有期間(売った年の1月1日現在) | 所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年を超える | 15% | 所得税額×2.1%(※) | 5% | 約20.315% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 所得税額×2.1% | 9% | 約39.63% |
復興特別所得税は、平成25年から令和29年までの各年分に課されます。(※)令和9年分以後は、この2.1%の内訳が変わるとする資料もありますが、国税庁の案内では確認できていません。合計の税率で見たときの負担は変わらない見込みです。売る時期が近い人は、国税庁のタックスアンサーで最新の表を確認してください。
相続した家の所有期間と取得費の扱い
相続で取得した家の所有期間は、亡くなった方が取得した時から数えます。国税庁は、被相続人の取得の時期が相続人にそのまま引き継がれると示しています。相続した日からではありません。
亡くなった方が20年前に買った家なら、相続してすぐ売っても長期譲渡所得です。
取得費は、亡くなった方が買ったときの購入代金や手数料が基になります。相続人が払った登記費用や不動産取得税も、業務に使っていない家なら取得費に含められます。
購入時の資料がなく取得費が分からないときは、売った金額の5%を取得費にできます。この場合、相続人が払った登記費用は取得費に含められません。
計算例:売却額3,000万円の場合
次の仮定で計算します。
- 売却額:3,000万円
- 取得費:800万円(亡くなった方が買った代金から、建物の減価償却費相当額を引いた額)
- 譲渡費用:120万円(仲介手数料105.6万円とその他の費用)
- 所有期間:5年超(長期譲渡所得)
- 相続人1人が全部を取得して、売却する
- 取得費加算を使う場合:その人の相続税額680万円、取得財産の価額8,000万円、売った実家の相続税評価額2,000万円、生前贈与はなし
- 3,000万円控除を使う場合:昭和56年5月31日以前の建築など、要件をすべて満たす
| 特例なし | 取得費加算 | 3,000万円控除 | 取得費が不明(5%) | |
|---|---|---|---|---|
| 売却額 | 3,000万円 | 3,000万円 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 取得費 | 800万円 | 970万円 | 800万円 | 150万円 |
| 譲渡費用 | 120万円 | 120万円 | 120万円 | 120万円 |
| 特別控除 | 0円 | 0円 | 3,000万円 | 0円 |
| 課税譲渡所得金額 | 2,080万円 | 1,910万円 | 0円 | 2,730万円 |
| 所得税(15%) | 312.0万円 | 286.5万円 | 0円 | 409.5万円 |
| 復興特別所得税(2.1%) | 6.6万円 | 6.0万円 | 0円 | 8.6万円 |
| 住民税(5%) | 104.0万円 | 95.5万円 | 0円 | 136.5万円 |
| 税額の合計 | 約422.6万円 | 約388.0万円 | 0円 | 約554.6万円 |
端数の処理は省いています。実際の申告では数字が少し変わります。
3,000万円控除は、控除額が譲渡所得より大きいため、課税される額は0円です。相続人が3人以上で家と敷地を取得したときは、控除の上限が2,000万円になります。計算を単純にするため、売却額全体に当てはめた例です。課税譲渡所得金額が2,080万円で上限2,000万円なら、残る80万円に約20.315%がかかり、税額は約16.3万円です。
所有期間が5年以下だった場合は、特例なしの課税譲渡所得金額2,080万円に、所得税30%と住民税9%がかかります。復興特別所得税を加えると約824.3万円です。亡くなった方が取得してから、売る年の1月1日までが5年以下の家は、この税率になります。
売却額3,000万円から、譲渡費用120万円と特例なしの税額約422.6万円を引くと、手元に残る額は約2,457.4万円です。住宅ローンの残りなどは考えていません。
取得費加算の170万円は、こう出す
取得費加算の計算は、国税庁の算式に沿って行います。
取得費に加算する相続税額 = その人の相続税額 × 売った財産の相続税評価額 ÷(その人の取得財産の価額+相続時精算課税適用財産の価額+暦年課税分の贈与財産の価額)
上の仮定は、生前贈与がないため、分母は取得財産の価額8,000万円だけです。
680万円 × 2,000万円 ÷ 8,000万円 = 170万円
取得費は、800万円に170万円を足して970万円になります。譲渡所得は、3,000万円-970万円-120万円で1,910万円です。
相続税額680万円は、この仮定のために置いた数字です。相続人が1人で遺産が8,000万円のとき、基礎控除(3,000万円+600万円×1人)を引いた4,400万円に、国税庁の速算表の20%と控除額200万円を当てはめた額です。債務や葬式費用、各種の控除は考えていません。
加算額が、特例なしの譲渡益を超えるときは、譲渡益に相当する額が上限です。
自分の数字で試算する手順
次の順に数字をそろえると、上の表に当てはめられます。
- 査定で、売却額の目安を出す
- 亡くなった方の購入時の契約書や領収書を探して、取得費を出す。見つからなければ売却額の5%で仮置きする
- 仲介手数料や印紙代、解体費など、売るための費用を見積もる
- 亡くなった方が取得した年から、売る年の1月1日までの年数を数える
- 相続税を払ったかを確認する。払っていれば取得費加算、払っていなければ3,000万円控除の要件を確認する
- 特例を使う場合の期限を確認する
特例の期限は相続した土地の売却は3年以内が有利かで、空き家の控除が使えない条件は空き家を売ったときの税金で確認できます。
売った金額が取得費と譲渡費用の合計を下回る場合は、課税される譲渡所得は出ません。
参考にした資料
- 国税庁 タックスアンサー No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.3211「短期譲渡所得の税額の計算」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.3270(相続・贈与で取得した土地建物の取得費と取得の時期)(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.4152「相続税の基礎控除」、No.4155「相続税の税率」(令和8年4月1日現在法令等)
最終確認日:2026年10月9日。制度や公表内容は変わる場合があります。税額の判断は、税務署や税理士などの専門家で確認してください。