相続した実家を売るまで|手続きと期限を時系列で整理

相続した実家は、期限の短い手続きから順に片づけていけば売れます。最初に来る期限は死亡届の7日と相続放棄の3か月です。売却の前には相続登記が要ります。売った後の税金は、売る時期で変わります。取得費加算は相続税の申告期限の翌日から3年以内、3,000万円控除は相続開始から3年を経過する年の12月31日までが目安で、期限の数え方が違います。
このページでは、手続きを時系列の表にしました。期限の数え始めの日が手続きごとに違うので、そこを一緒に載せています。
まず自分の家で確かめることは3つです。
- 亡くなった日と、それを知った日が同じかどうか
- 遺言書があるか、相続人が誰か
- 実家を売るのか、持ち続けるのか、相続自体を放棄するのか
手続きと期限の時系列表
次の表は、公式資料で確認した期限を早い順に並べたものです。右の列は、2026年10月15日に亡くなり、同じ日に知った場合の計算例です。実際の期限は、ご自身の起算日で数え直してください。
| 順 | 手続き | 期限と数え始め | 計算例 |
|---|---|---|---|
| 1 | 死亡届 | 死亡の事実を知った日から7日以内 | 2026年10月22日まで |
| 2 | 相続放棄(家庭裁判所) | 自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内 | 2027年1月中旬まで |
| 3 | 準確定申告(亡くなった方に確定申告が必要だった場合) | 相続の開始を知った日の翌日から4か月以内 | 2027年2月中旬まで |
| 4 | 相続税の申告と納税 | 死亡を知った日の翌日から10か月以内。土日祝なら翌日 | 2027年8月16日(15日が日曜のため) |
| 5 | 相続登記 | 相続で不動産を取得したと知った日から3年以内 | 2029年10月中旬まで |
| 6 | 空き家の3,000万円特別控除を受ける売却 | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで | 2027年12月31日まで(特例の適用は令和9年12月31日の売却まで) |
| 7 | 取得費加算を受ける売却 | 相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで(目安は死亡から3年10か月) | 2030年8月中旬まで |
「中旬」と書いた日付は、月と日の数え方で1日前後ずれることがあります。期限が近いときは、法務局・税務署・家庭裁判所に日付を確認してください。
この表の2から4は、売るかどうかに関係なく動く手続きです。5から7が、売却に直接つながる手続きです。
最初の3か月で決めること
死亡届は、親族や同居者などが、死亡地・本籍地・届出人の所在地のいずれかの市区町村に出します。
次に、相続を引き受けるかどうかを3か月以内に決めます。実家のほかに借金が残っているなど、引き受けたくない事情があれば、家庭裁判所に相続放棄を申し立てます。申立先は亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所です。財産の調査が間に合わないときは、期間を伸ばす申立てもできます。
放棄をすると、実家は相続できなくなります。実家を売りたい人は、放棄をしないことが前提です。放棄の判断に迷う場合は、期限を過ぎる前に家庭裁判所に相談してください。放棄後の管理責任は空き家の相続放棄で整理します。
相続登記は売る前に済ませる
実家を売るには、名義を亡くなった方から相続人に変える相続登記が先に要ります。法務省のQ&Aにも、相続した不動産を売却するときは相続登記が必要だと書かれています。
相続登記は2024年4月1日から義務になりました。期限は、不動産を相続で取得したと知った日から3年以内です。遺産分割で取得した場合は、遺産分割の日から3年以内に登記します。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料が科されることがあります。
義務化の前に相続していた不動産も対象です。登記がまだなら、2027年3月31日までに済ませる必要があります。
期限に間に合わないときは、相続人申告登記という簡易な方法があります。相続人であることを法務局に申し出る制度で、申出をした人は、相続登記の義務を果たしたものとされます。この申出はその人だけに効き、遺産分割で不動産を取得したときは、分割の日から3年以内に改めて登記が要ります。また、売却や抵当権の設定には相続登記が必要です。申告登記だけでは売れません。
相続人が多く戸籍の収集に時間がかかる場合や、遺言の有効性が争われている場合などは、正当な理由にあたる例として法務省が挙げています。
登記の手続きは、売買の相手が決まってから慌てて進めるより、売却の相談と並行して始めたほうが日程に余裕が出ます。売却の全体の手順は相続した実家の売却手順で、登記の詳しい手続きは相続登記の義務化と売却前の名義変更で確認できます。
相続税の申告が必要かを先に調べる
相続税の申告と納税は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。期限の日が土日祝なら、翌日が期限になります。申告先は、亡くなった方の住所地を管轄する税務署です。相続人の住所地ではありません。
申告が必要かどうかは、基礎控除額と遺産の総額を比べて見ます。基礎控除額の式は次のとおりです。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
たとえば法定相続人が3人なら、3,000万円+600万円×3人で4,800万円です。遺産の総額がこの額以内なら、基礎控除の範囲に収まります。法定相続人の数には、相続放棄をした人も放棄がなかったものとして数えます。計算例の人数と金額は、説明のための仮定です。
実際の判定は、国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」で試せます。遺産には実家の土地と建物のほか、預貯金や有価証券も入ります。
相続税の申告が必要になりそうなら、実家を売る前に申告の段取りを決めておきます。売却の税の特例が、相続税の申告期限と結びついているためです。
売ったときの税の特例は2つ、併用できない
相続した実家を売って利益が出ると、譲渡所得に税金がかかります。これを軽くする特例が2つあります。同じ家で両方は使えません。
| 取得費加算の特例 | 空き家の3,000万円特別控除 | |
|---|---|---|
| 内容 | 払った相続税の一部を、取得費に足せる | 譲渡所得から最高3,000万円を引ける |
| 売る期限 | 相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで |
| 主な条件 | 相続で取得し、相続税が課税されたこと | 昭和56年5月31日以前に建築された区分所有でない家屋で、売却代金が1億円以下。耐震基準に適合するか、取り壊して売ること。亡くなる直前に被相続人以外の居住者がいないこと。相続のときから売るまで、事業・貸付け・居住に使っていないこと |
| 相続税がかからない人 | 使えない | 使える(条件を満たせば) |
| 手続き | 確定申告で申請する | 確定申告で申請する。市区町村の確認書が要る |
3,000万円特別控除の上限は3,000万円です。2024年1月1日以後の売却で相続人が3人以上の場合は2,000万円までになります。対象となる人数の数え方は、国税庁のページで確認してください。制度の適用期間は2027年12月31日までの売却です。
選び方の目安は次の表です。
| あなたの状況 | 先に検討する特例 | 理由 |
|---|---|---|
| 相続税の申告が不要で、家が古い(昭和56年5月以前の建築) | 3,000万円特別控除 | 取得費加算は、相続税が課税されていないと使えない |
| 相続税を払っていて、家が新しい | 取得費加算 | 3,000万円特別控除は、旧耐震の家が対象 |
| 相続税を払っていて、家が古い | 両方を試算して比べる | 両方の条件を満たす場合は、有利なほうを選ぶ |
| 売却が相続から3年を超えそうだ | 期限の短いほうを先に確認 | どちらも期限を過ぎると使えない |
税額の計算例は相続した不動産を売ると税金はいくらで、3年以内に売るかどうかの判断は相続した土地の売却は3年以内が有利かで扱います。最終的な税額は、税務署か税理士に確認してください。
売る前に家族と決めること
相続人が複数いる実家は、全員の合意がないと売れない場合があります。共有名義のまま売れるかどうかは共有名義の実家は一人で売れるかにまとめています。
親が施設に入っていて本人の判断が難しい場合は、売却の手続きの進め方が変わります。権限の確認は施設に入った親の家は売れるかで扱います。
売れない土地を手放す方法の一つに、相続土地国庫帰属制度があります。使える土地の条件と費用は、その記事で確認してください。
売ると決めたら、査定は1社だけで決めません。2社以上の査定額を並べてから、売却方法を選びます。
次に読む記事
- 相続した実家の売却手順: 相続した実家の売却手順|期限と税金を先に確認
- 名義変更を進める: 相続登記の義務化と売却前の名義変更
- 税金を確かめる: 相続した不動産を売ると税金はいくら
- 3年の期限を確認する: 相続した土地の売却は3年以内が有利か
- 誰に相談するか決める: 相続した不動産は誰に相談するか
参考にした資料
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」(令和7年3月27日時点)
- 法務省 民事局「相続登記の申請義務化」(2024年4月1日施行)
- 法務省「死亡届」(届出期間・届出人・届出先)
- 裁判所「相続の放棄の申述」
- 国税庁 タックスアンサー No.4205「相続税の申告と納税」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.4152「相続税の基礎控除」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.2022「死亡した人の所得税の申告(準確定申告)」
- 国税庁 タックスアンサー No.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
- 国税庁 タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
最終確認日:2026年10月9日。制度や公表内容は変わる場合があります。期限や税額の判断は、法務局・税務署・家庭裁判所などの公的窓口と、司法書士・税理士などの専門家で確認してください。