施設に入った親の家は売れる?本人の判断能力と代理の手続き

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施設に入ったこと自体は、親の家を売る妨げになりません。親本人に判断能力があれば、本人が売主になれます。判断能力が十分でないときは、子が代わりに売っても有効にならないおそれがあります。その場合は、家庭裁判所で成年後見人などを立て、居住用の家を売るための許可も受けます。
最初にすることは、親の名義と、親が契約の内容を理解できる状態かを確かめることです。判断に迷うときは、かかりつけ医や施設の相談員に、本人の状態を聞いてください。
誰の許可があれば売れるか|権限の確認表
売る権限は、名義と本人の状態で決まります。
| 状況 | 売るための進め方 | 必要になるもの |
|---|---|---|
| 親の名義で、判断能力に問題がない | 本人が売主になる。子に頼むなら、本人が代理を任せる | 本人の意思確認。代理を任せる場合は委任状 |
| 親の名義で、判断能力が不十分 | 成年後見制度(後見・保佐・補助)を使う | 家庭裁判所の審判。居住用不動産の売却には許可 |
| 子が「親のため」として自分で売りたい | 本人の委任か、後見人などの権限がなければ売れない | 親の委任か、家庭裁判所が選んだ後見人の権限 |
| 名義が亡くなった人のまま | 相続人全員で相続登記をしてから売る | 戸籍、遺産分割の合意 |
| 親と子などの共有名義 | 共有者全員が売主になる | 全員の同意(共有名義の実家) |
家族だから代わりに売れる、という決まりはありません。親の家を売る権限は、本人の意思か、裁判所が定める後見人などの権限から生まれます。
判断能力が足りないと、契約はどうなるか
民法3条の2は、意思表示をしたときに意思能力がなかった人の法律行為を、無効としています。意思能力とは、自分の行為の結果を判断できる能力のことです。
家の売買は金額が大きく、あとから無効になると、買主も売主も困ります。そのため、買主や不動産会社は、売主の意思を確かめます。確認できないときは、成年後見人などの権限を求められることがあります。
判断能力の程度で、使う制度が3つに分かれます。
| 制度 | 対象になる人 | 権限 |
|---|---|---|
| 後見 | 判断能力が欠けているのが通常の状態の人 | 財産に関するすべての法律行為を、後見人が代理する |
| 保佐 | 判断能力が著しく不十分な人 | 不動産の売買など重要な行為には、同意権・取消権がつく。代理権は、家庭裁判所が定めた行為にだけつく |
| 補助 | 判断能力が不十分な人 | 同上。家庭裁判所が定めた特定の行為にだけつく |
どの区分になるかは、本人の状態を見て家庭裁判所が決めます。家族が選ぶことはできません。
家庭裁判所の許可が要るのは、居住用の家を売るとき
成年後見人が、本人の居住の用に供する建物やその敷地を処分するには、家庭裁判所の許可が要ります(民法859条の3)。対象は、売却、賃貸、賃貸借の解除、抵当権の設定です。保佐人と補助人は、不動産を処分する代理権を与えられているときに、同じ許可が必要になります。
許可の申立ては、売る前に行います。裁判所の案内では、売却の場合に、売買契約書の案、評価証明書、不動産会社の査定書などを出すとされています。
つまり、売る相手と価格の案をつくってから申立てをする流れです。査定は、1社だけでなく、複数社から取ると資料が整います。
家庭裁判所の案内では、いま住んでいなくても、施設などを出たときに住む家になる不動産は居住用不動産に含まれるとされています。施設に入っている親の家も、許可が要る前提で考えてください。申立ての前に、本人の住所地の家庭裁判所に確認してください。
後見を使うときの費用・期間・続き方
法務省と裁判所の案内で確認できる内容です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申立先 | 本人の住所地の家庭裁判所 |
| 申立手数料 | 800円(収入印紙) |
| 登記手数料 | 2,600円(収入印紙) |
| 医師の鑑定 | 必要な場合に費用がかかる。ほとんどは10万円以下 |
| 期間 | 多くは申立てから4か月以内。鑑定が入るとさらにかかることがある |
| 後見人 | 家庭裁判所が選ぶ。弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職が選ばれることがある |
| 報酬 | 家庭裁判所が決め、本人の財産から払う |
| 終わらせられるか | 本人の判断能力が回復したと認められる場合を除き、途中でやめられない |
最後の行は、売却のためだけに後見を使う場合に響きます。家を売り終えても、後見は続きます。報酬も続きます。
希望した人が後見人に選ばれなくても、そのことを理由に不服を申し立てることはできません。
売る前に、この順番で確かめる
迷ったときは、上から順に進めてください。
- 家の名義人を、登記簿で確かめる。亡くなった人のままなら、先に相続登記をする
- 共有名義でないかを確かめる。共有なら、全員の同意が要る
- 親の判断能力を確かめる。医師や施設の相談員に、現在の状態を聞く
- 判断能力に問題がなければ、親本人が売る。子が手続きを手伝うときは、委任状を作る
- 判断能力が不十分なら、家庭裁判所に後見・保佐・補助の申立てをする
- 後見人などが決まったら、査定を取り、売る案をつくって居住用不動産処分の許可を申し立てる
- 許可を得てから、売買契約を結ぶ
判断能力があるうちに決められること
親に判断能力があるうちなら、任意後見という方法もあります。本人が、判断能力が不十分になったときの備えを、公正証書で契約しておく制度です。家庭裁判所が任意後見監督人を選んだときに、効力が生じます。
法務省の案内では、公正証書の基本手数料が13,000円、登記嘱託手数料が1,600円、登記所に納める印紙代が2,600円です。
家を売るかどうかの意思も、判断能力があるうちなら、本人が自分で決められます。売る時期と売ったお金の使い道は、親の意向を聞いて書面に残しておきます。その後の手続きが進めやすくなります。
最終的な判断は、弁護士・司法書士などの専門家と、家庭裁判所の窓口で確認してください。
参考にした資料
- 民法 第3条の2、第859条の3(e-Gov法令検索)
- 裁判所「成年後見制度(後見・保佐・補助)の概要を知りたい方へ」
- 裁判所「居住用不動産処分の許可の申立て」(和歌山家庭裁判所の案内)
- 法務省「成年後見制度に関するQ&A」(法定後見制度について/制度の利用について)
最終確認日:2026年10月9日。制度や公表内容は変わる場合があります。