空き家の査定は何社に頼む?無料査定サービスの使い分け

空き家の査定は、まず3社前後に頼みます。次に、価格の根拠が具体的だった2〜3社に現地を見てもらいます。これは目安で、法律で決まった数字ではありません。
1社だけでは、出された金額が高いのか低いのか分かりません。反対に、10社に頼むと連絡の対応に追われます。3社なら、差が出たときに理由を聞き比べられます。
査定額は、売れる金額の保証ではありません。この記事では、査定の使い分けと査定額の見方を説明します。査定のあとに結ぶ媒介契約の違いも整理します。
何社に頼むかは状況で決める
次の表で、自分の状況に近い行を探してください。社数は目安です。
| あなたの状況 | 頼む数の目安 | 進め方 |
|---|---|---|
| 売るかどうかも決まっておらず、相場を知りたい | 書類だけの査定を3社 | 金額の差が大きければ、理由を聞く。この段階では媒介契約を急がない |
| 売る方向で決めている | 書類だけの査定を3社、現地を見る査定を2〜3社 | 査定額と根拠を並べて、1社か複数社に媒介を頼む |
| 建物が古く傷んでいる、片付けが終わっていない | 仲介の査定に加えて、買取の査定も1〜2社 | 仲介の手取りと買取の提示額を並べて比べる。計算は 空き家を買取に出す前に |
| 相続人が複数いる | 全員の意見がそろってから | 査定は依頼できても、売却は全員の合意がないと進めにくい |
| 売れたあとの税が気になる | 査定と別に、税務署か税理士へ確認 | 税の判断は査定とは別。国税庁の案内で要件を確認する |
査定の種類と、サービスの使い分け
査定には、書類や所在地の情報だけで出すものがあります(簡易査定や机上査定とも呼ばれます)。担当者が現地を見て出す訪問査定もあります。簡易査定は早く出ます。ただし建物の傷みや境界は見ていません。訪問査定は、建物の状態や境界を見て出すため、判断の材料が増えます。
依頼先の種類ごとに、向く場面を整理します。
| 依頼先 | 分かること | 向く場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 地元の不動産会社 | その地域での売れ行きと、買主の探し方 | 売却を前提にしていて、地域の事情を聞きたい | 1社だけでは比べられない。他社の査定と並べる |
| 全国展開の不動産会社 | 会社ごとの売却の手順と、買主の探し方 | 複数の会社の説明を聞いて比べたい | 空き家の売却の経験は担当者ごとに違う。経験を聞いてみる |
| 査定の申込を複数社へ送るサービス | 複数社の査定額を一度に受け取れる | 最初に相場の幅を知りたい | 申込内容が複数社に渡る。連絡が複数社から届くため、連絡の方法と回数の希望を伝えられるか申込前に確認する |
| 買取を行う不動産会社 | 現状のまま買い取った場合の提示額 | 傷みが大きい、早く手放したい | 仲介の売却額より低くなることがある。手取りで比べる |
| 自治体の空き家相談窓口・空き家バンク | 地域の売却や活用の情報 | 売るか貸すか迷っている | 自治体は査定額を出すとは限らない。空き家バンクは、登録すると買いたい人が検索できる仕組み |
| 不動産鑑定士の鑑定評価 | 専門資格者による評価 | 遺産分割などで評価額の根拠が必要 | 費用の有無は依頼先に確認する。不動産会社の査定とは別のもの |
無料かどうかは、サービスごとに違う場合があります。申込の画面と規約で、費用がかかる条件を確認してください。
査定額を見るときの確認項目
国土交通省の通達では、不動産会社が媒介の依頼を受けて価格について意見を述べるときは、その根拠を依頼者に示すことが求められています。根拠は、価格査定マニュアルや同種の取引事例など、合理的な説明がつくものとされています。査定書などの書面で根拠を示すときは、鑑定評価書ではない旨を明記することも求められています。
査定書を受け取ったら、次の点を見ます。
- 価格の根拠として、近い条件の取引事例や公示価格などが書かれているか
- 査定額が、売れる金額の保証ではないと説明されているか
- 建物の価値をゼロとして見ているか、残して売る前提か、更地にする前提か
- 他社より高い、または低い理由を、担当者に聞いて説明を受けたか
- 売却にかかる費用と、手取りの目安を示されたか
- 査定額が高いことだけを理由に、その場で媒介契約を勧められていないか
仲介手数料の上限は、国土交通省の告示で決まっています。売買代金が400万円を超える場合は、代金(消費税を除く)×3%+6万円に消費税が加わります。800万円以下の空き家には別の特例があります。計算例は 空き家を買取に出す前に にまとめています。
査定のあとに結ぶ媒介契約の違い
売却を任せる会社を決めるときに、媒介契約を結びます。国土交通省の標準媒介契約約款では、3種類があります。
| 一般媒介 | 専任媒介 | 専属専任媒介 | |
|---|---|---|---|
| 有効期間 | 3か月以内(行政指導) | 3か月以内 | 3か月以内 |
| 他の不動産会社にも重ねて依頼できるか | できる | できない | できない |
| 自分で見つけた買主と契約できるか | できる | できる。契約前に会社へ通知する | できない |
| 指定流通機構(レインズ)への物件登録 | 期限の定めなし | 契約の翌日から7日以内(休業日を除く) | 契約の翌日から5日以内(休業日を除く) |
| 会社からの状況報告 | 定めなし | 文書で2週間に1回以上 | 文書で1週間に1回以上 |
査定を3社に頼んだあとの動き方は、2通りあります。1社に任せたいなら、専任か専属専任で報告を受けます。複数社に買主を探してほしいなら、一般媒介で重ねて依頼します。どれを選ぶかは、物件の内容や買主の探し方を考えて、不動産会社と相談して決めます。
査定の前に準備すること
査定の依頼自体は、書類がそろっていなくてもできます。売却を進めるときに困らないよう、次の項目を確認しておきます。
- 登記の名義が誰になっているか。相続した空き家で名義が亡くなった人のままなら、相続登記が必要になる
- 固定資産税の納税通知書。土地と建物の評価額の確認に使う
- 建物の図面や、境界の資料があるか
- 家財や残置物が残っているか。処分は誰が行うか
- 鍵を、立ち会いや現地確認の担当者に渡せるか
- 相続人が複数なら、売却の方向性が合意できているか
相続登記は、2024年4月1日から義務になっています。相続で取得したと知った日から3年以内に申請します。正当な理由なく申請しないと、10万円以下の過料の対象になりえます。2024年4月1日より前に相続した場合の期限は、2027年3月31日です。
参考にした資料
- 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」第34条の2関係(価格についての意見の根拠の明示)
- 国土交通省「標準媒介契約約款」(宅地建物取引業法施行規則第15条の7第4号に基づく告示)
- 国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」
- 国土交通省 空き家対策特設サイト「空き家を売る・貸す際に活用できる制度」(空き家バンク)
- 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(建設省告示)
- 法務省「相続登記の申請義務化について」
不安があるときは、各都道府県の宅地建物取引業の窓口や、消費生活センターに相談できます。
最終確認日:2026年10月9日。制度や公表内容は変わる場合があります。売却と税の判断は、契約書と公式資料で確認し、専門家にも相談してください。