空き家を買取に出す前に|仲介との手取りの差と流れ

買取と仲介の手取りは、買取価格が仲介の成約価格の何割になるかで決まります。仲介には手数料がかかります。買取にはかかりません。それでも買取価格が仲介の成約価格より大きく低ければ、手取りは仲介のほうが多くなります。
買取価格が仲介の何割になるかは、事業者や物件の状態で異なります。公的な資料で割合を確認することはできませんでした。そこでこの記事では、90%と80%と70%の3パターンで手取りを比べます。仮定の条件では、約96%を超えれば買取の手取りが上回ります。
次の行動は、仲介で売る場合の査定額と、買取の提示額を両方取ることです。数字がそろえば、この記事の計算に当てはめて判断できます。
買取と仲介で手取りはいくら違うか
次の仮定で計算します。
- 仲介で買主が見つかったときの成約価格:1,500万円
- 仲介手数料:宅建業法の告示で定められた上限額(売主が払う分のみ)
- 買取:不動産会社が買主になるため、仲介手数料は生じない
- 買取価格:仲介の成約価格の90%、80%、70%の3パターン
- 印紙税と登記費用と片付け費用と譲渡所得の税は、どちらでも発生しうるため除く
| 仲介 | 買取(90%) | 買取(80%) | 買取(70%) | |
|---|---|---|---|---|
| 売却価格 | 1,500万円 | 1,350万円 | 1,200万円 | 1,050万円 |
| 仲介手数料(上限) | 56.1万円 | 0円 | 0円 | 0円 |
| 手取り | 1,443.9万円 | 1,350万円 | 1,200万円 | 1,050万円 |
| 仲介との差 | - | 93.9万円少ない | 243.9万円少ない | 393.9万円少ない |
この仮定では、買取価格が仲介の成約価格の約96.3%より高ければ、買取の手取りが仲介を上回ります。1,443.9万円を1,500万円で割った数字です。この計算は譲渡所得の税を含めていません。売却価格が低いほど税も下がるため、税を含めた実際の分かれ目は、この割合より少し低くなります。
仲介で売主が片付けや測量の費用を払う場合は、その分を仲介の手取りから引きます。たとえば50万円かかるなら、仲介の手取りは1,393.9万円です。境目は約92.9%まで下がります。
この計算が成り立つのは、仲介で1,500万円で売れた場合だけです。仲介は、買主が見つからなければ売れません。値下げに応じて成約価格が下がることもあります。査定額と成約価格が違うこともあります。実際の査定額に数字を入れ替えて確かめてください。
仲介手数料の上限はいくらか
仲介手数料(媒介報酬)の上限は、国土交通省の告示で決まっています。売買代金(消費税を除く)を区分ごとに計算して合計します。
| 売買代金の区分 | 料率の上限 |
|---|---|
| 200万円以下の部分 | 5% |
| 200万円を超え400万円以下の部分 | 4% |
| 400万円を超える部分 | 3% |
売買代金が400万円を超える場合は、「代金×3%+6万円」で同じ額になります。これに消費税10%が加わります。
| 売買代金 | 計算 | 上限額(税込) |
|---|---|---|
| 300万円 | 200万円×5%+100万円×4%=14万円 | 15.4万円 |
| 500万円 | 500万円×3%+6万円=21万円 | 23.1万円 |
| 800万円 | 800万円×3%+6万円=30万円 | 33万円 |
| 1,500万円 | 1,500万円×3%+6万円=51万円 | 56.1万円 |
売買代金が800万円以下の物件には、特例があります。2024年7月1日から、「低廉な空家等」の媒介では、依頼者の一方から30万円の1.1倍(33万円)まで受け取れます。調査などの費用を勘案した特例です。上の表で300万円や500万円の物件でも、33万円までは認められる場合があります。
この特例を使うには、媒介契約を結ぶ前に、上限の範囲内で報酬額を説明して合意することが求められています。安い空き家ほど、手数料の割合は高くなりえます。契約前に、報酬額を書面で確認してください。
買取では不動産会社が買主になります。仲介(媒介)の報酬は生じません。契約書に、手数料や事務費などの名目で別の請求がないかは確認します。
空き家を買取に出す流れ
買取の流れは、事業者によって細部が違います。大きな順序は次のとおりです。
- 名義を確認する。相続した空き家で名義が亡くなった人のままなら、相続登記を先に進める
- 2社以上に査定を依頼する。現地の確認が必要か、書類だけで出せるかを聞く
- 提示額と条件を並べる。価格のほかに、残置物の扱いと引き渡しの条件も比べる
- 売買契約を結ぶ。契約書の内容を読み、納得してから署名する
- 残代金を受け取り、鍵と書類を渡す。所有権の移転登記もこのときに行う
相続登記は、2024年4月1日から義務になりました。相続で取得したと知った日から3年以内に申請します。正当な理由なく申請しないと、10万円以下の過料の対象になりえます。2024年4月1日より前に相続した場合の期限は、2027年3月31日です。
買取に出す前の確認項目
- 提示額は「現状のまま」の価格か。残置物の処分や、境界の確認は誰が負担するか
- 売主が契約不適合の責任を負う期間は、契約書に書かれているか。民法の原則では、買主は契約に合わない点を知ってから1年以内に売主へ通知する必要がある
- 他の事業者の提示額と並べたか。その場で署名を求められていないか
- 相続人が複数なら、全員が売却に同意しているか
- 売却で利益が出るか。出る場合は、3,000万円の特別控除が使えるか、国税庁の案内で要件を確認したか
- 契約書に手数料や事務費の名目の請求がないか
3,000万円の特別控除は、相続した空き家のうち、昭和56年5月31日以前に建築されたものなどが対象です。要件は他にもあります。売却前に、税務署か税理士に確認してください。
買取と仲介のどちらが向くか
| あなたの状況 | 向く方法 | 理由 |
|---|---|---|
| 期限があり、早く現金にしたい | 買取の提示額を取り、仲介の査定額と比べる | 買取は手数料がかからない。手取りの差を計算してから決められる |
| 傷みや残置物が多く、仲介の買主が見つかりにくい | 買取の査定を含めて比べる | 仲介で売れ残ると、値下げや維持費がかさむ |
| 時間に余裕があり、少しでも高く売りたい | 仲介を先に検討する | 成約価格が高くなりうる。手数料の上限は事前に確認する |
| 相続人の意見がまとまっていない | 売却の方法を決める前に話し合う | 契約後に揉めると、やり直しが難しくなる |
買取と仲介の手取り・期間・手間を並べた比較は、空き家は買取と仲介どちらがよいかにあります。
買取の提示額を確認する
買取の価格は、1社の提示だけでは高いか低いか判断できません。上の計算に入れる数字を、実際の提示額で確かめます。
参考にした資料
- 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(建設省告示)
- 国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」(報酬の上限、低廉な空家等の特例。2024年7月1日以降)
- 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」改正の概要(令和6年7月1日施行)
- 一般財団法人不動産適正取引推進機構「不動産売買の手引」(契約書確認の項目)
- 法務省「2020年4月1日から売買、消費貸借、定型約款などの契約に関する民法のルールが変わります」
- 法務省「相続登記の申請義務化について」
- 国税庁 タックスアンサー No.3306(令和8年4月1日現在法令等)
不安があるときは、各都道府県の宅地建物取引業の窓口や、消費生活センターに相談できます。
最終確認日:2026年10月9日。制度や公表内容は変わる場合があります。売却と税の判断は、契約書と公式資料で確認し、専門家にも相談してください。